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ニットリビア・バックナンバー

第1回・素朴な質問だけど、ニットって何?(改訂版)


某番組のようなタイトルで申し訳ございませんが、ニット・繊維の気になるキーワードを紹介する新コーナーを立ち上げました!

記念すべき1回目は、ずばり「ニット」です。

「ニット」とは、生地となる糸を使って、垂直方向と水平方向、つまり平面に編目を連結して布状にしたもので、「メリヤス」とも呼ばれています。
また、そのようして作られた生地やその生地を使用した製品を総称する時にも使われます。
これらはそれぞれ、「ニット生地(ファブリック)」、「ニット衣料(ウェア)」とも呼ばれています。

織物や布帛のように、縦横の糸が直線状に交わっている形ではなく、糸を縦横に迂回させている形となっているため、ニットには必ずと言って良いほど伸縮が伴います
そのため、かつてニットは「莫大小」とも呼ばれていました。

それでは、一口にニットと言ってもどんなものがあるのでしょうか。

ニットには、編み方や生地の組織、また生地を編む機械の種類によって、大きく「経編(たてあみ)」「緯編(よこあみ)」に分かれ、特に筒状の編機で編まれるものは「丸編」と呼ばれます。
経編は、糸を上下方向、つまり縦方向に渡しながら編まれるもので、「トリコット」、「ラッシェル(楊柳)」などがこれにあたります。一方「緯編」は、どちらも糸を左右方向(横方向)に渡しながら編まれます。なお、丸編機で編まれた生地は、出来上がった生地は筒状になっています。

ところで、なぜ「経」を「タテ」、「緯」を「ヨコ」と呼ぶのか疑問に思われるかと思います。そこで、私たちのすむ地球をイメージしてみましょう。
地球上のあらゆる地点は「東経135度・北緯35度」などのように「経度」「緯度」で表されます。同じ経度及び緯度を線上に結ぶと、経度は北極と南極をまっすぐ結ぶ経線になり、緯度は北極と南極を貫く軸(以下地軸)に対して垂直に交わる同心円状の緯線になります(これらはあくまでも理論上の説明です)。
ご存知の通り、地球は地軸を軸として自転し、太陽に対して約23.4度傾いて太陽の周りを公転しているわけですから(季節があるのはそのためです)、地軸が縦と見なされます。
それゆえ、地軸を結ぶ経線は縦、地軸と垂直に交わる緯線は横となるため、「経」=「タテ」、「緯」=「ヨコ」となったと思われます。


ニットの用途は多種多様で、インナー・アウター・靴下などといった衣料用としての用途はもちろん、椅子カバー・シーツなどのインテリア分野、包帯などの医療用品、さらには漁業などで使われる網としても使われております。

このように、ニットには様々な種類と用途があり、私たちの暮らしに深く溶け込んでおります。

第2回・ニットの編み地にはどんなものがあるの?(改訂版)


ニットは、大きく「緯編(よこあみ)」「経編(たてあみ)」に分かれ、多種多様な用途を誇っていることは第1回でも説明した通りですが、編み方の種類、つまり編地もバリエーションに富んでいます。
ここでは、「緯編」と「経編」それぞれの編地について詳しく紹介していきたいと思います。

1.緯編の基本編
緯編の基本的な編地には、「平編」「ゴム編」「パール編」の3つがあります。
伸縮性に富み準備が比較的簡単で、編機によっては成形が可能なものもありますが、途中で糸が切れた場合には糸抜けや伝線(ラン)を起こしやすく、なおかつ目立つのが欠点です。
a)平編は、同じ編み目が横方向に続く編み方で、通常は天竺(編み)」と呼ばれています。この編地が何故インドの別称である天竺と呼ばれるかはっきりしたことはわかっておりませんが、インドが綿花の一大生産地であることから、インドと何らかの関係があるのかも知れません。
b)ゴム編は、表の編み目の次に裏の編み目が並ぶ編み方で、縦に編み目が並びます。こちらはまたの名を「リブ」もしくは「畦編」とも呼ばれています。なお、このゴム編を重ね編みしたのが「スムース編」(両面編)で、表裏同じような編み目が特徴です。
c)パール編は、横に渡す糸ごとに編み目を交互もしくは数本おきに変化させる編み方で、これを用いて凹 凸や柄模様の編み目を作り出すことができます。このパール編は、主に靴下(ソックス)で用いられます。

2.経編の基本編
経編の基本的な編地には、「デンビー」「コード」「アトラス」の3つがあります。
経編では、編機の「筬(おさ)」という板が糸のガイドを果たすわけですが、1枚使う場合はシングル○○、2枚使う場合はダブル○○などと表します。
糸切れした場合でもランが起こりにくく目立ちにくいのですが、緯編と較べて伸縮性に乏しく成形も不可能で、編む場合には一定の準備が必要です。
a)デンビー編みは、「トリコット(編み)」の方がわかりやすいかと思われます。この編地は隣同士の糸を絡ませながらつくられる編地で、経編の中では最もシンプルな編み方です。
b)コード編みは、編目が隣の糸を飛び越して二本分先の糸まで移動させる編み方で、縦に伸びる畝状の編目が特徴です。なお、ダブルコード編みの場合は、一方の糸の量を多くしてループを大きく作ることで、タオルでおなじみの「パイル編み」、さらには大きい方のループを毛羽立たせる「起毛パイル」を作り出すこともできます。
c)アトラス編みは、編目が斜めに連続し、途中から反対側に折り返す、ジグザグな編目になっているのが 特徴です。これを応用したものには、ダイヤモンドのような菱形模様の編目ができる「ダイヤモンド編み」などがあります。また、編目を途中で折り返さずに右上がり・右下がり双方の編目を交差させて編むことのできる編機を使ってつくられる「ミラニーズ編み」もあります。

基本的な編地は上記の通りですが、ニットの編地には、これら以外にもバリエーションがたくさんあります。
これらは、上記の基本的な編み方に加えて、タックウェルトという編み方を加えることで生み出されます。

「タック」とは、糸を何本か編み針にかけた状態にした後、次に来る糸で元の編み目に戻す編み方です。
「ウェルト」は逆に、数本の糸を編み針にかけないで次に来る糸で元の編み目に戻す編み方です。

このようにして編まれた生地の中でも特に有名なのが、仔鹿(こじか)の背中のように細かい斑点状の突起が並んでいるような編み目の「鹿の子編み」です。

この他にも、様々な模様編みが特徴の「ジャカード」や、重ね編みで作り出される「ダブルフェイス」(段ボールニット・リバーシブルニット)なども、これらニット・タック・ウェルトを使いこなして作られています。
このように、ニットの生地には、編み方次第で無数のバリエーションが存在するのです。



第3回・編み機と編み針って何?


ニットは編み方次第でバリエーションが無限大にあることは、第2回でもお話し致しましたが、これらを生み出す上で欠かせないのが、ほかでもない編み機の存在です。

編み機には、形状によって、丸型編み機平形編み機とに大きく分けられます。
私たちが編物教室などでよくお目にかかる編み機は、卓上タイプの平型編み機が主流です。しかし、工場で大量生産する場合は、主に丸型編み機が使われます。
これは、平型編み機と比べてたくさんの糸が使え、なおかつ回転運動することにより、短時間で多くの生地が編めるからです。
こうして作られた生地は、カットソー製品用などかなり広い用途に使われます。
一方、工業用で平型編み機が使用されるのは、ポロ衿などの形を整えた製品を作る場合に使われます

そして、これらの編み機で主役を司るのが、言うに及ばず編み針です。
編み針と言っても、手芸用の編み針よりもさらに細くて先がフックのように曲がっているものがほとんどで、とりわけ「ベラ針」「ヒゲ針」がよく用いられます。

ベラ針は、フック状に曲がった針に、上下に動く小さなベラと呼ばれる針が取り付けられたものです。このベラが上下に動くことで、フック状の針と合わさって開いたり閉じたりします。そのため、バリエーションに富んだ編み方ができます。
ただこのベラ針は、メーカーや使用用途などで形状も大きさもまちまちで、機種によって違う針を使わなければなりません。また、ベラが不規則に動いたり衝撃で動かなくなったりすると、生地キズをつくってしまうおそれもあります。

ヒゲ針は、文字通り先端がヒゲないし釣り針のように曲がった針で、ベラが付いていないためフックの開閉はしません
ただ、こちらは針の動きに加えて、特殊な形をした板も動かさなければなりません。
なお、ヒゲ針の歴史はベラ針よりも古く、編み機が開発された当初は、このヒゲ針方式が主流でした。

第4回・なぜ編み機でニットが出来る?


第3回目では、編み機と編み針の種類についてお話しましたが、今回は、なぜ編み機でニットが出来るかについて焦点を当ててみたいと思います。

編み機は、数多くの細い編み針が線状もしくは筒状に装着され、これらを運動させることによって、糸を絡ませながら生地を編み上げていきます。それこそが、編み機がニットを生み出す原理に他ならないわけですが、ただ規則正しく動かすだけでは、天竺などの単純な編み方でしかできません。
そこで、編み針の運動にさまざまな変化を持たせることで、鹿の子やジャカードなどの編地が作られます。その役目を担うのが、「カム」と呼ばれるものです。

「カム」とは、編み針の下に取り付けられる突起の付いた台のことで、これが回転することで、編み針が初めの位置より上に来たり下に来たりし、それによって通常の編み方ではできなかった「タック」「ウェルト」などの編み方もできるようになります
さらに「カム」を下げると編み目が粗くなり上げると編み目が細かくなります

話を脱線させますが、繊維業界では、一定の幅や長さ当りどれだけ編み目があるかという密度のことを「度目(どもく)」と呼びます。この値が小さいほど編み目が疎らで粗く、逆に大きいほど編み目が密で細かくなります。
なお、編み機で編み目を密にすることを「度詰め」と呼ぶことがあります

一方、「カム」の調節とは別に、編み機に取り付ける針を1本以上わざと抜いてしまうことで、編み目を飛ばす編み方もあります「針抜き」「テレコ」などの編地は、このようにして作られます。


編み機で生地を作る際には、度目(密度)調節はもちろん、ニット用の糸が途中で切れたりたるんだりしないよう、張力を一定にすることが重要です。さらに、生地を編む場合は、埃や糸くずなどが入り込まないように細心の注意を払う必要があります。もちろん、編み針に変形や折れなどがないか、編み機が正常に作動するかなどのメンテナンスも必要です
これらを1つでも怠ると、「ネップ」・「とび込み」・「横段」・「斜行」など、生地由来の欠点や編みキズの原因になってしまいます
良い生地を作るためには、最大限の注意と手間と労力が必要なのです。

第5回・繊維に使われる素材には何があるの?


今回から、繊維に使われる素材を大きなテーマに、さまざまなニットリビアを紹介してまいります。
まず手始めに、私たちが衣類に用いられる繊維の素材について、歴史をひもときながらざっとご紹介致します。

私たちが普段身に着けている服などの衣類は、人類がこの世に現れてから着られ続けています。
今でこそ多種多様な素材で作られていますが、産業革命が始まる200年くらい前までは、自然に存在する素材でしか衣類が作られませんでした。
これらは「天然素材」と呼ばれ、綿や麻など植物から生み出されるもの、羊毛や絹など動物から生み出されるもの、変わったものでは鉱物から生み出されるものもあります。

やがて産業革命が起こると、衣類は高速かつ大量に生産されるようになります。
その一方で、自然にある天然素材を原材料として、レーヨンやキュプラといった「再生繊維」が生み出されるようになりました。
また、再生繊維よりもさらに化学的な方法で、アセテートなどの「半合成繊維」も作られました。

その後1936年に、ナイロンが発明されたのを皮切りに、ポリエステルアクリルなどが生み出されました。
このように、自然の素材を使わず、化学的・人工的な方法で造られた繊維は、「合成繊維」と呼ばれています。


今日の繊維や衣料は、こうした技術の進歩によって成り立っていると言っても過言ではありません。

第6回・衣服で使われる毛ってどんなもの?

今回の記事を書いた2月は、北半球では冬にあたります。
冬になると、暖かさを求めて毛皮やセーターなど毛製品が恋しくなってまいります。
今回は、その「毛」についてお話ししたいと思います。

この地球上には、毛を生やしている生き物が数多く存在しております。
我々人間にも身体のあちこちに毛が生えていますが、それ以外にも哺乳動物・鳥・あるいは虫などにも毛が生えています。
毛には、寒さや敵から身を守ったり、毒を帯びさせて敵を攻撃したりするなどさまざまな用途があります。

これに対して我々人間は、身体を被う毛がかなり薄く、また毒も帯びていないため、とても寒さや外敵などから身を守ることができません。
そのため、太古の昔からさまざまな動物の毛皮を身にまとったり、毛を刈り取って糸状にしたりして、衣服が作られてきました。
こうして作られる毛糸は、手芸やセーターなどで現在でもよく使われています。

我々人間が衣料として毛を使う場合は、基本的に哺乳動物の毛を用います。鳥の毛(特に鴨などの水鳥)を用いることもありますが、こちらは布団やダウンジャケットの中綿など、保温性が要求される用途に限られます。
哺乳動物の毛は一般的に長く密生していて、そこに空気の層が作られるため断熱性に富んでいます。
さらに皮脂によって、水から身体を守る働きがあります。
つまりこれらによって、寒さから身体を守ることができるのです。


毛糸として使用される哺乳動物の毛は、羊の毛である「ウール」が最も多く使われています。またこれ以外に、ヤギ・ウサギ・ラクダなどの毛も用いられます。代表的なものには、「モヘヤ」(アンゴラヤギ・チベットヤギなど)、「アルパカ」(南米ペルーの山地に生息するヤギの毛)、「アンゴラ」(ウサギの毛)、そしてカシミール地方に生息するヤギから採れ、繊維の宝石とも呼ばれる「カシミヤ」などがあります。

第7回・羊毛にはどんな特徴があるの?


前回は、衣服で使用される「毛」のあらましをお話致しましたが、今回は、その中でも特に代表的な「羊毛」についてお話したいと思います。

我々は、古くから羊と密接に付き合ってきました。
原始時代の狩猟採集生活から文明が進化する段階から、羊は人類にとって欠かせない存在でした。
キリスト教の聖書でも、羊飼いや小羊など、羊に関する言葉が数多く出ています。
羊の毛をして単に「毛」と呼ぶのは、そうした慣習があってのことなのかも知れません。

羊毛を生み出す牧羊は、今でこそオーストラリアやニュージーランドなどでも数多く生産されていますが、19世紀には、いち早く産業革命が興ったイギリスで盛んに生産されていたため、今なお品種名や毛糸の太さを表す「番手」(この説明は後の回に回します)の算出など、イギリスの影響が色濃く残っています。

羊には約300種もの品種がありますが、毛の長さや太さによってかなりのバリエーションがあります。
その代表格が「メリノ種」で、細くて柔らかく、かつ毛が程よく縮れているため、衣服用に適しています。特に肩の部分や腹回りなどの部分が最も良質とされています。

羊毛は、19種類ものアミノ酸のほか硫黄分も含まれており、それらが化学的に結び付いて複雑に絡まり合う形となっているため、ほとんどタンパク質と考えていただいても差し支えありません。
断面は円形ないし楕円形で、表面にはスケールと呼ばれるうろこに覆われています。一方スケールの内側は、吸湿性に富むコルテックスと呼ばれる物質からなっています。またコルテックス自身も、アミノ酸の種類や配列により2種類に分かれているため、熱や水分によって収縮に差が出てきて独特の縮れが生まれます
このため羊毛には、次のような特徴があります。
1)伸びに強く、シワになりにくい。
2)水滴を弾くが水蒸気を通す。
3)湿った状態で押し固めると、繊維が絡まり合って縮む(これを「フェルト化」と呼びます)。
4)虫害にあう可能性が高い(ナフタレンや樟脳、パラジクロルベンゼンなどの防虫剤と一緒に保管するのはそのためです)。

最近では、化学的な処理によりフェルト化を防ぐ防縮加工など、洗濯機でも洗える素材も出回っていますが、毛製品のメンテナンスは、ドライクリーニングが一般的です。


次回は、天然素材で最もポピュラーな「綿」についてお話ししたいと思います。


第8回・綿ってどんな特徴があるの?


私たちが普段身に着けている衣類の中で最も親しまれている素材と言えば、まず「綿」(めん)を思い浮かべることでしょう。
綿は、身体に直接触れるインナー(肌着)から、シャツ・ブラウス・ジャケット・デニム・ジーンズ・スカートなど、幅広いアイテムに使われています。
ここでは、そんな幅広い活躍を見せる綿とはどんなものか、お話ししていきたいと思います。

綿、英語で言うコットンは、綿花(ワタの花)という植物から生み出されます。
綿繊維は、綿花の種の周りにびっしり生えている毛状の繊維のことを指します。綿花は花が散ると、コットンボールと呼ばれる実を結びます。綿の繊維はこのコットンボールの中で成長し、やがてそのコットンボールが開くとその繊維がむき出しになり、太陽光で乾燥されます。

綿の繊維はセルロースと呼ばれる物質が主成分で、表面には脂質の一種であるロウ(蝋)質でコーティングされています。セルロースとは、ブドウ糖やショ糖(砂糖)などの糖類が鎖状につながっている物質で、この仲間としてデンプン(澱粉)があります。ただセルロースは、デンプンと比較して分解されにくいのが特徴です。
一方、ミクロ・フィブリンと呼ばれる物質が螺旋状に並んでいるためねじれがあり、繊維の内側は空洞になっています。

このような繊維構造のため、加工がしやすく、かつ衣類の素材として最適ともいえる特徴をつくりだしています。
主だった特徴は、以下の通りです。
1)天然のねじれがあり、繊維同士と絡まりやすく、糸にしやすい。
2)肌触りが良く、吸湿性に優れている。
3)軽量ながら保温性に優れている。
4)薬品に強い(特にアルカリ)。

一方、毛とは異なり、繊維を曲げるとなかなかまっすぐにならず、シワになりやすい欠点もあるため、硫黄分が含まれる薬品などでシワになりにくくする防シワ加工(イージーケア加工)が施されることもあります。
また繊維をアルカリの液体に浸すことで、より光沢のある繊維にすることもでき、これを「マーセライズ」ないし「シルケット加工」と呼びます。
この他、余分な毛羽立ちをガスバーナーで焼いたり、微生物によって分解させたりして光沢を出す方法もあります。

綿花は、アメリカや中国・メキシコ・ブラジル・インド・エジプト・パキスタンなど、世界の広い範囲で栽培されています。また産地によって栽培される品種が異なり、そのため繊維の長さも多岐にわたっています。
繊維の短いものは太い糸か布団などの中綿などに使われるのに対して、長いものは細い糸などに使われ、高級品として扱われています。わけてもカリブ海周辺の西インド諸島で生産される海島綿(シーアイランド綿)や、アメリカなどで生産され、ペルー原産で繊維の長いピマ種よりも長いスーピマ綿は非常に繊維が長く、最高級品とされています。
繊維の太さは、毛と同じく番手という単位で表されます。一定の重さに対する太さのため、数値が大きいほど細くなりますが、毛と違って分母と分子が逆転しているのが特徴です。

日本でも、戦国時代から昭和初期にかけて盛んに栽培されていましたが、現在は完全に輸入に依存しています。そればかりか、合成繊維の台頭や衣料品の輸入急増などで、最近では綿そのものの輸入も激減している状況です。そんな中、地球環境に配慮して、農薬を使わずに有機栽培で育てられた綿花を用いて、衣料品になるまでのプロセスで極力化学的処理を行わない「オーガニックコットン」なる綿繊維も徐々に出回りつつあります。
最後に余談ですが、綿繊維に被われている種子からは油脂(綿実油)が採れ、食料とされることもあります。

次回は、季節を先取りしますが、「麻」についてお話したいと思います。

第9回・麻ってどんな特徴があるの?


前回は、あらゆる繊維の中で最もポピュラーな「綿」を取り上げましたが、今回は、綿にひけをとらないほどポピュラーな「麻」についてお話ししたいと思います。

は、およそ7000年前からミイラを包む布として使われるなど、繊維の中で最も古くから付き合いのある素材です。
ひとくちに麻と言っても、その種類は約50~60もあると言われ、植物学上の分類も多岐にわたっています。そのため、繊維の採れる部位をはじめ、性質や用途もそれぞれ異なります。衣類として使用される代表的なものに、次に述べる亜麻苧麻(ちょま)があります。
1)亜麻(別名;リネン・フラックス)
麻の中で最もポピュラーな素材で、ロシアをはじめ、ヨーロッパや北アメリカで生産されています。
茎にあたる「靱皮(じんぴ)」から採れるため、靱皮繊維に分類されています。
繊維の長さは、30センチから2メートル以上とさまざまで、断面は五角ないし六角形で中は小さな中空で、ところどころに節があるため、繊維同士の摩擦が大きくなっています。
ちなみに、寝具用のシーツ・カバー置場の「リネン室」は、これに由来しています。
2)苧麻(ラミー)
苧麻とラミーは、葉の裏の色が微妙に異なり(苧麻は白、ラミーは淡い緑色)、植物学上厳密に異なる種類ですが、繊維としての性質はほとんど同じです。
苧麻は中国・日本などの温帯、ラミーは東南アジアなどの熱帯が主な産地です。
靱皮繊維に分類され、刈り取りと同時に表皮をはがして繊維を採取します。繊維の長さは7~28センチと長く、断面は楕円形で、亜麻と同じくところどころに節があります。
靱皮繊維には他にも、インドが主要産地の「黄麻」(ジュート)「大麻」 (ヘンプ)などがあります。なお大麻 (ヘンプ)は麻薬の原料にもなるため、国内外において栽培などが厳しく規制されています。

一方、マニラ麻やサイザル麻などは、葉脈から繊維が採れる葉脈繊維に分類されています。
これらの種類は繊維がきわめて硬く、糸にしづらいため、衣類としてではなく、主にロープなどの工業資材や壁紙などのインテリア資材に使用されています。今では聞く機会が滅多にない「リノリューム」は、この麻素材に由来しています。

麻繊維は、繊維自身に強度があり吸湿・速乾性に優れ洗濯や腐食に強い特徴がありますが、綿同様シワになりやすく染色しにくい欠点もあります。しかしこれを精練漂白すれば、絹のような光沢が出てシワになりにくく、吸湿・速乾性にも優れた素材になります。
シャリ感や清涼感など、麻独特の風合いもあるため、麻単独もしくは他の繊維との混紡で、肌着やポロシャツ、サマーセーターなどの春夏向け衣類に幅広く利用されています。


次回は、天然繊維の中でも特に高貴とされ続けている「絹」についてお話ししていきたいと思います。

第10回・絹ってどんな特徴があるの?


今回は、主要な天然素材の中できわめて高級な素材とされる「絹」についてお話ししたいと思います。

絹(シルク)は、別名「生糸(きいと)」もしくは「真綿(まわた)」と呼ばれ、光沢のある美しい繊維が長く連続しているため、昔から高級素材として扱われています。古くからあるヨーロッパと中国、そして日本との交流網が「シルクロード」と呼ばれる程、絹は贅沢品の代名詞とされています。

絹繊維を生み出すのは、カイコガ(蚕)という蛾で、人工的に飼育、つまり養蚕で育てられる家蚕と、野生の野蚕があります。カイコガの幼虫は主に桑の葉などを食し、さなぎになるにあたって、外敵や衝撃などから身を守るために繭を作りますが、その繭から、美しくしなやかな絹繊維を採り出します。

絹の繊維は、繊維質となる2本のフィブロインと、フィブロインを包み込む糊状のセリシンが主成分です。私たちが転んだりして出血した時、その傷口をふさぐ役割をするのがこのフィブロインです。
羊毛と同様に、各種アミノ酸が鎖状に連なり、いくつもの化学的な結合によって形成されています。断面は細長い三角形状で、ところどころに縮みがあり、透明になっています。独特の光沢と滑らかな風合いがあるのはそのためです。

絹繊維は、弾力性があってしなやかで、吸湿性にも優れていますが、紫外線に非常に弱く、直射日光や高温多湿の環境では黄ばんだり染めムラが起こりやすくなります。また摩擦にも弱く、こするとすぐに毛羽立ってしまいます。
このように、絹繊維は非常にデリケートな素材なので、洗濯機・手洗い問わず、水洗いに不向きな素材と言えます
糸にする際には、繭を煮て糸がほぐれやすいように柔らかくしてから繊維の端を見出し、いくつかの繭から見つけ出した繊維を合わせて撚りをかけて糸にします。ポピュラーなものでは、おおよそ6~8本の繊維を合わせて作られます。

ところで絹繊維は、絹の繊維は繭1個分で800~1200mと非常に長いため、天然素材では長繊維に分類されています(他に蜘蛛の糸などもありますが)。これに対して、綿や麻・羊毛などは繊維の長さが長くて2m程度なので、短繊維に分類されています。そのため、太さを表す単位も、一定の重さを基準とする「番手」ではなく、一定の長さを基準とする「デシテックス」が用いられます(少し前までは「デニール」でしたが、国際単位化により「デシテックス」に変更されました)。

絹の歴史は古く、中国ではおよそ3000年ほど前から作られ始めたと言われています。
日本でも明治時代の殖産興業政策により、群馬県の「富岡製糸場(2014年に世界遺産に登録されました)」などで量産されていた時期もありましたが、現在では絹も輸入に頼るようになり、養蚕農家も生産される生糸もかなり規模が縮小しています。それだけ国産の絹は希少価値が高くなっているのです。



天然素材シリーズは、これをもちましておひらきとさせていただきます。
次回からは、人工的に作られる繊維についてお話ししていきたいと思います。

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